いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

「ち・が・や」

僕の誕生日のころには、毎年チガヤの花が咲く。
正確に言えば、花とは呼べないのかもしれないけど……


銀色の穂みたいな花が、道路の隅に生える雑草として風にたなびくのだ。


『ち・が・や』……って言うねんな、お父さん!


僕は雑草に詳しいから、特徴的な雑草は言えるように、息子に教えるようにしていた。


まだ小学生くらいの息子は、目を輝かせながら僕にそう笑いかけた。


いつかいー君が、生まれてきた子供にちがやの花を教えられるように……


そんな僕の願いは無残にも打ち砕かれた。


いー君が、この世の中からいなくなった今でも、ちがやの花は咲き続ける。


僕が死んでこの世からいなくなっても、ちがやの花は咲き続ける。


この季節になると思いだすんだ。


いー君を乗せて走った車の車窓から見える銀色の穂の海を。


二度と巡り来ることのない、いー君の希望に満ちた笑顔とちがやの花を。



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