「ち・が・や」
僕の誕生日のころには、毎年チガヤの花が咲く。
正確に言えば、花とは呼べないのかもしれないけど……
銀色の穂みたいな花が、道路の隅に生える雑草として風にたなびくのだ。
『ち・が・や』……って言うねんな、お父さん!
僕は雑草に詳しいから、特徴的な雑草は言えるように、息子に教えるようにしていた。
まだ小学生くらいの息子は、目を輝かせながら僕にそう笑いかけた。
いつかいー君が、生まれてきた子供にちがやの花を教えられるように……
そんな僕の願いは無残にも打ち砕かれた。
いー君が、この世の中からいなくなった今でも、ちがやの花は咲き続ける。
僕が死んでこの世からいなくなっても、ちがやの花は咲き続ける。
この季節になると思いだすんだ。
いー君を乗せて走った車の車窓から見える銀色の穂の海を。
二度と巡り来ることのない、いー君の希望に満ちた笑顔とちがやの花を。
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