台所でフォークを探していた僕の目に、懐かしいものが飛び込んできた。 「しんかんせん」のスプーン。 生前、幼稚園時代にいー君がお弁当に使っていたフォークだ。 たぶん気にしなかっただけで、ずっとフォークの棚のところにあったのだろう。 いー君がいつも大切に使っていたフォーク…… 十数年経た今でも、印刷が... 続きをみる
2016年6月のブログ記事
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いま……初めて気づいた。 遅い……遅すぎる。自分の朴念仁ぶりが嫌になる。 そうなんだ……いー君は、妹になにも書き遺していない。 僕たち両親だってかろうじて3行の遺書だ、それでもあっただけましかもしれない。 妹は……なにも書き遺してもらえなかった。 いー君、あわてん坊だし、余裕がなかったんだよね。 ... 続きをみる
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今日はちょっとした本に出会った。 知り合いが教えてくれた青い小さな冊子。 精神科医の先生が書いた、ありがとうは魔法の言葉……みたいな薄い本だ。 ありがとう……幸せです、ありがとう…… 自己暗示をかけるかのように、何度も何度も書き連ねられていた。 そうなんだ忘れていた……哀しさだけでいろんなものを見... 続きをみる
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パパ、また田舎の港に釣りに行きたい…… 生前のいー君が良くいっていた言葉だ。 うちの田舎の能登半島……そこから先端へ進むと、そこは魚の宝庫だ。 関西では一日20匹釣れたら上出来なのに、人口の少ない田舎だから、港の堤防から水面を見ると、魚影で真っ黒になっており、撒き餌をしようものなら波しぶきが立つく... 続きをみる
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毎日毎日…… もう何か月同じ電車で同じ場所に通っているんだろうか。 これまでの人生ほとんど自動車通勤だった僕が電車にこれだけ揺られるのは、社会に出たての銀行員の頃以来だ。 心の中で割りきれているはずなのに…… 息子と同年代の子たちを見ると、何となく胸が痛いんだ。 かすかに見覚えのある、通学用バッグ... 続きをみる
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今日の遺族会も有意義だった。 やっぱり、こういう集まりって大事なんだ。 弱音を堂々と吐き出して、沢山の人と分かち合いが出来る場所。 自死遺族と言っても、それぞれの人が、それぞれの物語を持っている。 亡くなった人たちの歩んだ道も、多種多様なんだよね。 それぞれがそれぞれの一生という物語を、書き終えて... 続きをみる
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明日は遺族会だ。 多くの同じ境遇の人たちが集まり、力いっぱい泣ける日。 詳細は会の約束だから話せないけど…… 僕よりとっても辛い人たちが、沢山たくさんいるんだ。 僕は少し……いー君の現実を飲み込めたような気がする。 もうだれにも頼らずに歩いていく力があるような気がする。 でも、伝えたいんだ。 僕と... 続きをみる
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夢を見た。 娘が……まだいるはずがないと信じたいけど、台所で彼氏とスマホで話していた。 僕が話しかけると、ムッとした表情で電話を切った……ただそれだけの夢。 でも起きてから、ものすごく怖くなったんだ。 そう……いつかは娘もまた、恋をするということ。 いー君は、恋をしたゆえに死んでしまった。 きっと... 続きをみる
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今日もまた、小さないー君を自転車に乗せて駅まで向かう。 今日もまた、小さないー君を膝に乗せて電車に乗る。 今日も作業所のカウンセラーさんといろいろお話をしていた。 亡くなったいー君の話になって…… 気持ちは分かるけど、決して僕が悪いわけじゃない、誰が悪いわけじゃない……と。 それは、自死遺族の分か... 続きをみる
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電車に乗る時、街を歩くとき…… いつも僕の横には、いー君がいる。 いつも左手を伸ばして、いー君と手をつないでいる。 自転車に乗る時は、いつもいー君を後ろに乗せている。 いま僕といつも一緒に行動しているいー君は、5歳くらいの小さな頃のイメージ。 電車で横が空席の時はちょこんと座ってニコニコしているい... 続きをみる