いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

2016年6月のブログ記事

  • 「しんかんせん」のスプーン

    台所でフォークを探していた僕の目に、懐かしいものが飛び込んできた。 「しんかんせん」のスプーン。 生前、幼稚園時代にいー君がお弁当に使っていたフォークだ。 たぶん気にしなかっただけで、ずっとフォークの棚のところにあったのだろう。 いー君がいつも大切に使っていたフォーク…… 十数年経た今でも、印刷が... 続きをみる

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  • 何も伝えることはなかったのかい?

    いま……初めて気づいた。 遅い……遅すぎる。自分の朴念仁ぶりが嫌になる。 そうなんだ……いー君は、妹になにも書き遺していない。 僕たち両親だってかろうじて3行の遺書だ、それでもあっただけましかもしれない。 妹は……なにも書き遺してもらえなかった。 いー君、あわてん坊だし、余裕がなかったんだよね。 ... 続きをみる

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  • 主なき室外機

    窓の外を自室から眺める。 カラスザンショウの樹と……いー君の部屋のエアコンの室外機。 もうおそらく動くことはない。 主なき部屋のエアコンの、主なき室外機。 いー君は優しい子だったから、電気代がもったいないってめったに使わなかったっけ。 それでよく熱中症になって、学校を休んだんだよね。 いや……分か... 続きをみる

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  • 百万回のありがとうを君に

    今日はちょっとした本に出会った。 知り合いが教えてくれた青い小さな冊子。 精神科医の先生が書いた、ありがとうは魔法の言葉……みたいな薄い本だ。 ありがとう……幸せです、ありがとう…… 自己暗示をかけるかのように、何度も何度も書き連ねられていた。 そうなんだ忘れていた……哀しさだけでいろんなものを見... 続きをみる

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  • 歌を継ぐもの

    お世辞にも上手と言えないわめき声のような歌が、リビングから聞こえてくる。 いー君の妹の声だ。 スマホを買ってやったから、そこから動画を見てイヤホンをして一緒に歌っている。 いー君も歌が好きだった。 いつもイヤホンをして歌っていたっけ。 妹は正直近所迷惑レベルの下手さなので、なんとかしたいが…… ま... 続きをみる

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  • 梅雨が明けたら釣りに行こう

    パパ、また田舎の港に釣りに行きたい…… 生前のいー君が良くいっていた言葉だ。 うちの田舎の能登半島……そこから先端へ進むと、そこは魚の宝庫だ。 関西では一日20匹釣れたら上出来なのに、人口の少ない田舎だから、港の堤防から水面を見ると、魚影で真っ黒になっており、撒き餌をしようものなら波しぶきが立つく... 続きをみる

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  • 蒼き抜け殻

    僕の寝室は荒れたままだ。 あの時から時間が止まっている。 何せ急な葬式だったから、家の雑多なモノは葬式の時に寝室に全部押し込んだ。 そして、部屋の中には…… まだいー君が中学校の時に来ていた、青いジャージの上下がそのままになっている。 そろそろ手をつけなくちゃとは思ってる。 手をつける……なぁ。 ... 続きをみる

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  • 君が毎日通った軌道の上で

    毎日毎日…… もう何か月同じ電車で同じ場所に通っているんだろうか。 これまでの人生ほとんど自動車通勤だった僕が電車にこれだけ揺られるのは、社会に出たての銀行員の頃以来だ。 心の中で割りきれているはずなのに…… 息子と同年代の子たちを見ると、何となく胸が痛いんだ。 かすかに見覚えのある、通学用バッグ... 続きをみる

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  • 梅雨空と短編小説の君と

    今日の遺族会も有意義だった。 やっぱり、こういう集まりって大事なんだ。 弱音を堂々と吐き出して、沢山の人と分かち合いが出来る場所。 自死遺族と言っても、それぞれの人が、それぞれの物語を持っている。 亡くなった人たちの歩んだ道も、多種多様なんだよね。 それぞれがそれぞれの一生という物語を、書き終えて... 続きをみる

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  • さあ、遺族会へ行こう!

    明日は遺族会だ。 多くの同じ境遇の人たちが集まり、力いっぱい泣ける日。 詳細は会の約束だから話せないけど…… 僕よりとっても辛い人たちが、沢山たくさんいるんだ。 僕は少し……いー君の現実を飲み込めたような気がする。 もうだれにも頼らずに歩いていく力があるような気がする。 でも、伝えたいんだ。 僕と... 続きをみる

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  • もう恋なんかして欲しくない

    夢を見た。 娘が……まだいるはずがないと信じたいけど、台所で彼氏とスマホで話していた。 僕が話しかけると、ムッとした表情で電話を切った……ただそれだけの夢。 でも起きてから、ものすごく怖くなったんだ。 そう……いつかは娘もまた、恋をするということ。 いー君は、恋をしたゆえに死んでしまった。 きっと... 続きをみる

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  • 16時間前の印鑑

    人の明日の生死なんか、誰にもわからない。 どんなにその人を愛し、慈しんだって……生死を何とかするなんて出来ない。 僕たちは……大切な子供をなくすことで、それを学んだようにと思う。 妻が生きて、動いて、話している…… 娘が生きて、動いて、話している…… そして生きたまま今日という一日を終える。なんと... 続きをみる

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  • 誰も悪くないとは言うけれど……

    今日もまた、小さないー君を自転車に乗せて駅まで向かう。 今日もまた、小さないー君を膝に乗せて電車に乗る。 今日も作業所のカウンセラーさんといろいろお話をしていた。 亡くなったいー君の話になって…… 気持ちは分かるけど、決して僕が悪いわけじゃない、誰が悪いわけじゃない……と。 それは、自死遺族の分か... 続きをみる

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  • とっても小さな君を連れて

    電車に乗る時、街を歩くとき…… いつも僕の横には、いー君がいる。 いつも左手を伸ばして、いー君と手をつないでいる。 自転車に乗る時は、いつもいー君を後ろに乗せている。 いま僕といつも一緒に行動しているいー君は、5歳くらいの小さな頃のイメージ。 電車で横が空席の時はちょこんと座ってニコニコしているい... 続きをみる

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