梅雨が明けたら釣りに行こう
パパ、また田舎の港に釣りに行きたい……
生前のいー君が良くいっていた言葉だ。
うちの田舎の能登半島……そこから先端へ進むと、そこは魚の宝庫だ。
関西では一日20匹釣れたら上出来なのに、人口の少ない田舎だから、港の堤防から水面を見ると、魚影で真っ黒になっており、撒き餌をしようものなら波しぶきが立つくらいの魚であふれかえる。
そんな中で彼は、心から釣りを楽しんでいた。
何せテクニックもなにも必要無いのだ。餌をつけずカラ針でをキラキラさせるだけでも、撒き餌さえすれば魚が掛かってくるくらいだ。
ただ当然のこと……長距離を車を運転する僕はたまったものではないのだが。
楽しかった……
まぶしい太陽の下で、釣れた魚を見せにくるいー君の純真無垢な笑顔。
何回行ったかな……毎回楽しい思い出ばかりだったね。
梅雨が明けて夏休みになったらまた行こう……そう約束していたのに。
君が持つべき釣竿は、もう2度と出番がないかもしれない……
いや、行こう。
夏が忙しかったら秋でもいい。釣りに行こう。
いー君の遺骨ペンダントを下げて……海に行こう。
誰にも邪魔されない、海といー君と僕だけの世界。
約束したもんね。
いつになるかわからないけど……釣りに行こう。
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