いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

我が家には訪れない春

息子が通っていた仏教系の高校からもらった香典代わりの高価な線香がそろそろ尽きる。


甲子園で何回も優勝している有名校。


息子も、ブツブツいいながら甲子園の応援に駆り出されていたな。


……と、ふとそんなことを思いながら、仏壇に向かって手を合わせる。


彼の遺骨はまだ仏壇の横に置いてある。


お寺の住職さんが、お墓とかに入れるのはいつでもいいんだよ、と言ってくれたし。


誰も訪れない真っ暗な山の中のお墓とかに入れると、可哀想な気がして。


嫁が何かいいだすまでは、ずっと家に置いておこうと思うんだ。


日にち薬のおかげで、息子が抜けたなりの生活が戻りつつある。


が、深い傷跡はずっと残っている。


娘はずっとあれから中学校を不登校……


結局中学には1年の3カ月だけ通っただけで、あとはずっと不登校のまま。


このまま卒業……になりそう。


僕は怖くて怒れない、何も言えない……


もういいんだ、生きてさえいてくれれば。なにも高望みしない。


そう、生きていることが大切。そう自分に言い聞かせている。


障害のある子だし……というか、僕が障害を遺伝させたから、申し訳ないしかない。


嫁も笑うようになった。


娘も笑うようになった。


でも、それはどこか空虚に響いている。


もうたぶん、本当に僕たちが心から笑える時は来ないんだろう。


傷跡……痕……きずあと。


息子が斬り裂いた、真っ赤で真っ黒な深い爪の傷跡は言えることはない。


息子が斬り裂いた……違う。


僕たちが息子を救ってやれなかった。彼に傷跡をつけたのが僕たちだ。


なんで……なんで……


こんなことになっちゃったのかな。


日にち薬のおかげで、最悪の状態からは『寛解』した……ような気がする。


でも『完治』はしない。


僕たちの、そして息子の命までを奪った深い深い爪の傷跡。


僕たちの家族に、もう春はやってこない。


桜が咲いても……セミが鳴いても……木々が赤く色づいても……


僕たちの家族に、もう春はやってこない。



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