いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

カバーをかぶったままの君の自転車

いい天気。


庭にもまだちょっと早いけど初夏の気配。


ウチの玄関の前には自転車が2台。


ひきこもったまま不登校の娘の自転車と……


そして君という主人を失ったもう一台の自転車。


鼠色のカバーをかぶったまま、2度とだれも乗ることもなく、静かにたたずんでいる。


君が学校に行っていたあの日の自転車。


サドルをバカみたいに高くして乗ってたよね。危ないといっても聞かなかった君。


交通事故にあってもしものことがあったらどうする!……って僕は怒ったけど。


もしものこともなにも……そんなことと比べ物にならないかなしい逝き方。


もし……


もしだよ。


交通事故で君が死んだなら、ちょっとはあきらめがついてたんだろうか。


運転手を一生恨んで、泣いて叫んで……


いや……


君が選んだ道なんだよね。死に方にどっちもいいもへったくれもないよね。


動かない自転車。


君を乗せて走ることもない自転車。


いつまで置いておけばいい。


ずっと置いておくべきなんだろうね……君が生きた証に。


もう2度と……


このまぶしい太陽の光も受けることなく。


鼠色のカバーをかぶったまま、静かに終末の時を待つ自転車。


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