参考書と窓の景色と『夢』の色紙と
今日は嫁が、4月から中学生になる娘の必要なものを買いに行って半日不在。
リビングにいる2匹のワンコ達は、僕に降りて来いと狂想曲。
息子の部屋から持って降りるノートパソコンを借りるため、ドアを開ける。
あの日のまま止まった時間。
警察の人たちが鑑識のために撒いた薬品で、黒く汚れた絨毯。
部屋の隅にわだかまる布団と毛布。
テーブルの上には参考書と、愛用していた香水。
そして窓の外は新緑の庭木と蒼い空。
季節は移り変わっていくのに、この部屋の時間だけは『あの日』から止まっている。
そして、たんすの上には『夢』と墨書された色紙。
夢……
いー君の夢……想い描いた未来の姿。聞かせてほしかったな、君の口で。
全然手をつけていない。つける気力も付けるつもりもない。
勝手に手をつけたら、いー君怒るかもしれないから。
のんびり自分の部屋で過ごしてるのに、勝手に触らないでよ、って。
ここは君の部屋。
誰もいなくなったら……取り壊されて更地になるまではずっと君の部屋。
止まった時間のまま、窓からの景色だけは変わっていく。
君の部屋に入るたび、僕は君の短い人生と向き合わなきゃいけない。
でも、君の部屋に入れば、君を鮮烈にそばに感じることができる。
変わらないんだ。窓からの季節以外は何も変わらない。
君が確かに生きた証を、いつまでもここに残そう。
君のいない季節。君のいない世界……
季節だけは確かに変わっていく。
時計は止まっていても、時間は確かに流れていく。
この部屋は君だけのもの。いつまでも。いつまでも。
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