いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

参考書と窓の景色と『夢』の色紙と

今日は嫁が、4月から中学生になる娘の必要なものを買いに行って半日不在。


リビングにいる2匹のワンコ達は、僕に降りて来いと狂想曲。


息子の部屋から持って降りるノートパソコンを借りるため、ドアを開ける。


あの日のまま止まった時間。


警察の人たちが鑑識のために撒いた薬品で、黒く汚れた絨毯。


部屋の隅にわだかまる布団と毛布。


テーブルの上には参考書と、愛用していた香水。


そして窓の外は新緑の庭木と蒼い空。


季節は移り変わっていくのに、この部屋の時間だけは『あの日』から止まっている。


そして、たんすの上には『夢』と墨書された色紙。


夢……


いー君の夢……想い描いた未来の姿。聞かせてほしかったな、君の口で。


全然手をつけていない。つける気力も付けるつもりもない。


勝手に手をつけたら、いー君怒るかもしれないから。


のんびり自分の部屋で過ごしてるのに、勝手に触らないでよ、って。


ここは君の部屋。


誰もいなくなったら……取り壊されて更地になるまではずっと君の部屋。


止まった時間のまま、窓からの景色だけは変わっていく。


君の部屋に入るたび、僕は君の短い人生と向き合わなきゃいけない。


でも、君の部屋に入れば、君を鮮烈にそばに感じることができる。


変わらないんだ。窓からの季節以外は何も変わらない。


君が確かに生きた証を、いつまでもここに残そう。


君のいない季節。君のいない世界……


季節だけは確かに変わっていく。
時計は止まっていても、時間は確かに流れていく。


この部屋は君だけのもの。いつまでも。いつまでも。