いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

撓んでいく運命の輪

僕と妻が作った、一つの大切な命。


その一つが壊れたことにより、沢山の人の運命が変わっていく。


死に向かって突き進む人が、見落としてしまう大切なこと。


それは、遺されたたくさんの人たちの運命をも変えていくこと。


今日……息子と付き合っていた女の子が、学校を退学したと聞いた。


いー君と出会い、未来を誓い合っていた女の子の運命の輪が撓んでしまった。


一時は恨んだりもした。許さないと思ったりもした。


でも……運命の輪が道を外れることなく回り続けていたとしたら……
彼女はうちでお嫁さんになっていたかもしれないんだ。
赤ちゃんを……かわいい孫を産んで、同じ屋根の下で過ごしていたかもしれないんだ。
この僕が買ったこのマイホームは、いー君とその奥さんのものだった決めてたから。


うちに来たら、うまくいかなかったかもしれない。
喧嘩したり、憎み合ったり……怒ったり泣いたり。


でも……家族になってたかもしれないんだよね。


大切な命を失ったのは、僕たち家族だけではない。
彼女にとっても……きっと大切な命だったんだ。


赤ちゃんの鳴き声と、いー君夫婦の笑い声……
たくさんの、笑顔、笑顔、笑顔……


もろいガラスに映し出された幸せな光景は、音を立てて割れ……
儚く光る砂となって、闇の中へと溶けていく。


新しい道が開けるといいね……
新しい素敵な人に出会えればいいね……


家族になっていたかもしれない女の子に、表向きはそういうべきなのかもしれない。


でも、心の中じゃ……ずっといー君を想っていてほしいと思うんだ。


一生懸命生き抜いて、お浄土でいー君と一緒になってほしいんだ。


僕が口を出せることじゃないのは、十分わかっている。
どうあっても、よそさんのお嬢さんだ。
あちらのご両親は、早く立ち直って娘さんに幸せになってほしいと願うだろう。


僕は……


まだ大人になりきれていない女の子に、何を願えばいいんだろう。


彼女の新しい幸せを願うべきなのか……


いー君をずっと想ってほしいと願うべきなのか……


僕たちの作りだした……一つの大切な大切な命は……


たくさんの人の運命の輪を捻じ曲げ、撓ませてしまった。


こんなはずじゃなかったのに……


誰かを幸せにするために、作りだした命なのに。


いー君……お浄土にいるいー君、聞こえるかい?


あの子を幸せにしたい……そう願ってたんだろ?
ちゃんと、あの子のこともしっかり見守ってやりなよ。


あの子が、どの道を歩むにしても……しっかり最後まで見守ってあげなよ。


そして……


君と同じ悲しい決断をしようとする、沢山の若い子たちに知らせてあげてほしいんだ。


自分の運命の輪を自分で断ち切る時……


それは周りで回るたくさんの人の運命を撓ませる……ってことを。


いー君……


今日は、パパと一緒に夢の中で反省会だね。
今日はちょっと怒るぞ。正座して待っておきなよ。