今日も聞こえる救急車の音
ウチは消防署のすぐ近く。
大病院もウチの家のすぐ近く。
便利でいいんだけど……
いつも聞こえるんだ、あの音が。
救急車の音がひっきりなしに鳴り響く。
あの日を思い出すんだ。
息子が搬送されたあの日のことを。
土気色なった息子の足を、僕は何とも言えない気持ちで見ていた。
一生けん命救急隊の人が、息子を心臓マッサージしてくれている。
生き返るわけないのに……いや、もしかしたら一縷の望みが……
いろんな考えがグルグルして、僕は茫然と妻といっしょに救急車に乗っていた。
消防署のすぐ近くなのに……大病院のすぐ近くなのに。
既に尽きた命には、そんなことは何の救いにもならなかった。
あの日のことを思い出す。
泣くこともできず、生まれて初めて救急車に乗ったあの日のことを。
こんなことで乗ってみたかった救急車に乗ることになるなんて……
嘘だよね。夢を見てるんだよね……そう信じたかったんだ。
乱暴に心臓マッサージされて、揺れる息子の身体。
もう思い出したくないあの日。
でも毎日救急車の音は、絶えることなく僕の耳に飛び込んでくる。
思いだしたくないあの日。
でも強制的に思い出させられるあの日。
やり直せないのかな……あの日の前日から。
なかったことに出来ないのかな、あの日のことを。
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