そして告別式が始まった。

なんだろう……お通夜のときと違ってものすごく冷静だった。
泣き崩れる嫁の背中をさすって……そしてぼんやりとお坊さんの読経を聞いていた。

運命って残酷だな……
正直息子の死をまだ受け入れきれていない。まあ３日で全部飲みこめってのも無理な話だ。

そして……

そして……

葬儀屋職員さんの『最後のお別れです、もう棺の蓋をあけるのは最後になります』の言葉。

参列者のみんなが、花やお菓子を入れてくれる。
僕が買ってきた、サーモンのおすしも入れてもらった。
ひとつにだけワサビをたっぷりと塗ってやったんだ、息子にびっくりさせてやろうと思って。

花に包まれた安らかな笑顔に満たされた自分の息子……ものすごく荘厳で美しかった。
ずっとこのまま……腐らないのなら自分の家に置いておいてやりたい。
本当に美しい芸術品みたいだったんだ、息子は。

そして……
非情にも蓋は閉められた。号泣する嫁……背中をさするしか能がない僕。

僕は位牌を、嫁が遺影を持った。

いやだ、いやだと髪を振り乱しわめく嫁。そりゃ当然だよ。
うちの娘が気丈に嫁を支えていた……どんだけ頑張ってるんだよ、泣けばいいのに……

そして……僕は……

生まれて初めて霊柩車に乗ることになる。

最期まで一緒にいられるのは、僕だ。
僕が一緒にいなきゃいけないんだ。

僕は涙も何も出なかった……
あるのは心労によるものすごい眠気……

そして、息子と一緒に斎場に旅立った。
一方通行の、２度と戻ってこれない旅へ。

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