いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

終わりの始まり~悪夢の瞬間①~

2015年11月20日 18時……
すべてはここから始まった。


おかしいと思った、何をしているのか……と。


息子の部屋のドアに、スポーツバックが引っ掛かっていた。
奇妙なことをしてるなぁ、と思いつつ、帰宅して疲れていたのでそのまま仮眠をとっていた。


「いおり、いおりいいいいいいいいいいいいいっ!」


妻のつんざくような悲鳴。救急車、救急車呼んでええええっ!


僕は意味もわからず跳ね起き、隣室の息子の部屋に向かった。
息子が倒れていた。病気か?意味がわからないが、とりあえず119番。
電話をしながら……何となく状況がつかめてきた。
変色している息子の足、青白くなった顔、ピクリとも動かない身体。


スポーツバッグの肩ひもをドアに掛けて首をつった……意味がわかった時には、もうすべてが遅かった。


奇声を上げ心臓マッサージをする妻、僕はもう何をしていいかわからない。
ウソだろ……
ウソだろ……


救急隊が来て息子を連れて行く……僕も救急車に同乗。


夢であってくれ……
なんだよ、自殺って。
僕は何も聞いてないぞ……何も聞いてない!


病院に搬送され、蘇生措置が取られる……
でも、分かってたんだ。もう全然間に合わないってこと。


待っている間、何をしていたかあんまり覚えていない。
会社に電話したり……今でなくてもいい無駄な行為をずっとしていた気がする。


19時42分……医師より死亡宣告。


狂ったように、息子の頬をたたき、起きろと半狂乱の嫁。


なぜか涙が出なかった。泣き方がわからなかったんだ。
僕は茫然と泣き崩れる嫁の背中をさすっていた……気がする。


分からない……意味が全然わからない。自殺する理由など思い当たらんぞ。


土気色の息子の亡骸を……ネックレスのような首吊りのむごい傷を……
僕は茫然と見ていた。


当たり前に続くと思われていた日常……
永遠に続くと思っていた、退屈ながらも平和な日々。


終わるなんて思ってもいなかった。


夢であってほしい……


立てなくなって車いすに乗せられた嫁を茫然と僕は見つめていた。


おそらくは一生忘れないだろう……


2015年11月20日……


終わりが始まった日。


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