『虚』~うつろ~
娘が、夕飯の時間になっても、ゲームに興じている。
スプラトゥーン……とかいう、いま流行しているゲームだ。
なるほど、これは人気が出るはずだ。横で見ていても面白い。
キャラクターのコミカルな動きに、思わず僕も笑いが出てしまう。
家族で過ごす時間……
笑いに満ちた楽しい時間。
でも、何か一つ足りない時間。
そうなんだよね。やっぱりいー君がいなきゃ。
でも、こんな状況でも、何とか笑いと楽しさで埋め尽くそうと思うんだ。
先日、某大学の先生の研究の協力をしていた時、先生が言われていた。
旦那さんが奥さんを残して、自死をされた家。
『見える』方が、その家を訪れた際。
亡くなった旦那さんは、ひたすらさまよっていたそうだ。
奥さんに自死してしまったことが申し訳なくて、謝りたくて謝りたくて……ひたすらさまよっておられたんだって。
いー君はどうなんだろうね。
もしかしたら、僕たちに謝りたくて、謝りたくて……ずっと苦しんでいるんじゃないかって。
大丈夫だよ、いー君。
謝らなきゃいけなかったのは、君を助けられなかった、僕たちの方なんだから。
いー君が安心して、この家で何も悩まずに過ごせるように……
僕たちは、できるだけいっぱいの笑いと楽しい雰囲気で、この家を満たしておくよ。
いー君がいつまでも、ゆっくりこの家で過ごせるように。
いー君が、いつまでものんびりと過ごせるように。
虚ろな笑いでもいい、乾いた笑いでもいい。
とにかく、笑いと明るさで満たしておくんだ。
いー君が、いつでも『ただいま』って帰ってこられるように、ね。
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