2階の足音~ずっといてもいいからね~
ミシッ……ミシッ……
(まただ……)
誰もいない2階から聞こえてくる足音。
部屋や廊下をせわしなく移動しているようだ。
あの子がいなくなってから、静かな昼間……『彼の足音』が頻繁に聞こえるようになった。
いや……オカルトとか、そっち方面の話じゃないんだ。
ただ事実としてこういう話を書いてる。
階下から話しかけたらぴたりとやむ。
そしてしばらくしたらまた歩き始める。
ダックスフント2匹は、その音に過敏に反応して、ワンワンワンワン……うるさいことこの上ない。
正直家に一人でいるときは、そういうのはご遠慮願いたいんだ。
いや、いてくれるのはうれしいんだけど……恥ずかしがらずに出てくればいいのに。
でもやっぱりうれしいな。家にちゃんといてくれるんだ。
気のせい?
気のせいでも十分なんだ。
いー君……ずっとおうちにいてもいいからね。
もう何にも悩むことはないんだ。ずっとうちでゆっくりしていてね。
もしかしたらいるのかもしれない……そう期待して、彼の自室をあけるけどやっぱり空っぽ。
君の部屋はずっとこのままにしておくよ。
断捨離なんか糞食らえだ。
ずっとずっと僕たち家族が暮らしたあかし……いー君の部屋はそのままに取っておく。
どこにも行かなくていいんだよ。
ずっとみんなでこの家に一緒にいようね。
君が過ごした17年間の大切な思い出がここにはあるんだ。
ずっとずっと君の部屋は、このままにしておくね。
ずっとずっと……この家でゆっくり過ごしてね、いー君。
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