ムノウノ　ラクイン

2016/12/02 00:09

『だから、この人は普通の人みたいに、障害で一人では何もできないんですよ！』
主治医の言葉を僕は黙って聞いていた。

復職面談のために集まった会社の人、障害者支援の人、そして呼ばれた嫁。

医者がいうんだから、それは事実なんだろう。

実際に重度の障害の僕は、何にも出来ない人間だから。

そうだよ。

そう。子育ても出来なかったんだ……子供を大人にすることが出来なかった。

無能……無能の烙印は、僕にはとっても重かった。

自分で自分の無能を嗤うことはいいんだ。

でも、他人の客観的な正論として言われたら……とっても辛かったんだ。

そうだよな……能力が無いんだよ。

そりゃテレビでは、障害者の人が頑張ってもてはやされている。

身体の人、知的の人……

でも、僕みたいに精神の人、発達障害の人にスポットは当たらない。

どんなに重度でも。

どんなに苦しんで泣いて過ごそうにも。

子供に申し訳ないんだ……申し訳なかった。

僕が甘かったんだ。

そう、僕は何にも出来ない無能な人間。

これでよかったんだろうか……僕は歩いてきた道を振り返る。

一生懸命頑張れば、障害なんて克服できると思ってた。

一生懸命頑張れば、健常者の人に手が届くと思ってた。

一生懸命頑張れば、幸せになるなんて愚想を抱いてた。

一生懸命頑張れば……

頑張った僕に与えられたのは、君の骨が入った骨壺。

頑張った僕に与えられたのは、もう戻ることのできない荊の道。

頑張った僕に与えられたのは……

一生消えることのない……「ムノウノ　ラクイン」