いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

上目づかいはもう嫌だから

いー君は、その場の空気を読んでくれるいい子だった。


賢くて優しくて……


でも、ときどき僕の顔を上目づかいで見てたよね。


僕もそう。


重度の発達障害で、人の気持ちが分からないから。


思っている流れと、すぐに違う方向へ行っちゃうから。


迎合しちゃうんだよね。


どうやったら嫌われないか、どうやったら怒られないか。


他人に対して上目遣いで生きてきた。


でもね、もうそれはやめようと思うんだ。


ここはもう君がいない世の中。


人の顔色をうかがって生きるのはやめようと思う。


今度ね、弁護士さん雇って会社と戦うことにした。


うん、凄い人なんだ。ものすごく辣腕の人。


ご機嫌とって戻る場所じゃないってわかっているから。


大企業の正社員とか、そんな肩書……そんなもの要らないことに気づいたんだ。


僕は、健常者に負けないように頑張ってきたけど……


僕は健常者の輪から弾かれないように、上目遣いで他人を見てたけど。


戦ってみることにした。


お浄土にいる君に、もう負ける姿は見せたくないから。


もうだれにも上目遣いはしない。


優しい君を思い出してしまうから。


もうすぐ君の一周忌。


見てなよ、相手は名のある大企業。


例えひねりつぶされようとも、毒の牙を突きたてて、腕の一本はもぎ取ってくる。


僕が迎合しきれなくて潰れなきゃ……


きっと進路に迷って君が命を絶つこともなかったんだと思う。


僕は重度の障害者。そもそも健常者に勝てないのかもしれない。


上目遣いの優しい君が、本当にゆっくり眠れるように……


僕は戦ってくる。


もうだれにもどこにも迎合はしない。誰にも障害を嗤わせはしない。


僕は勝って……


君の世界でたった一人の父親として、胸を張って君に会いに行く。


僕の顔を上目遣いで見ることを教えたのは、僕の咎。


優しさだけじゃ生きていけないことを、きちんと教えるべきだったんだよね。


ちょっとドタバタした一周忌になるかもしれないけれど。


障害を嗤い、人権を蹂躙する巨悪と僕は戦ってくる。



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