「しんかんせん」のスプーン
台所でフォークを探していた僕の目に、懐かしいものが飛び込んできた。
「しんかんせん」のスプーン。
生前、幼稚園時代にいー君がお弁当に使っていたフォークだ。
たぶん気にしなかっただけで、ずっとフォークの棚のところにあったのだろう。
いー君がいつも大切に使っていたフォーク……
十数年経た今でも、印刷がはげただけで、フォークの輝きは保っている。
しんかんせんのフォークは、心なしか主を失ってさびしそうに見えた。
このフォークを使っていた、小さな可愛い男の子は、大人になり……
しなくていい恋に惑って、命を散らせてしまった。
可哀想なスプーン。
可哀想ないー君。
なんとなく切ない気分になった、いつもと変わらない夜。
やっぱりいー君の死という事実は、いつまでたっても払拭できそうもない。
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