いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

少しの時間だけど『君』でいてほしい

いつもと変わらぬ、京都発奈良行きの快速電車。


僕は窓側の席をとり、電車の発車を待つ。


夕方4時だ……一人で2人掛けの椅子に座れないことは分かっている。
毎日いろんな人が座るんだ。


外国人の人、年配の男性、妙齢の女のひと。


もう誰でもいいんだ。興味とかそういうの無くなっちゃった。


シャカシャカシャカシャカ……
シャカシャカシャカシャカ……


イヤホンから漏れる、不愉快な音楽っぽい音。


高校生くらいの男の子だ。


昔ならイライラしたのかもしれない。怒鳴ったかもしれない。


でも、腹立ちより前に、愛しかったんだ。
いー君の同じ歳くらいの子。
モラルがないのかもしれないけど……本人はどこ吹く風。


そのうち、イヤホンで音楽を聴きながら、一心不乱で携帯ゲームをやりだした。


いー君そっくりだな……ちょっと苦笑する。


いー君も生きてる時、ちょうどこうやって電車通学していたのかもしれない。


こうやって……


こうやって……


いつしか涙が出てきた。嗚咽になる。


隣の男の子は気付かずに、一心不乱にゲーム中。


いー君が乗り移って、僕の横に座ってくれたのかもしれない。


幸せでとっても悲しい時間。


涙が止まらなくて……
悲しくて……嬉しくて……


とってもとっても幸せな時間だった。


常識とかそんなものは、後回しでいいんだよ。


精一杯生きてほしい、どこかの駅であわてて降りていく少年の背中に、僕はそんな言葉をかけて泣き崩れていた。


どんなに悪い子でもいい。
親の顔が見たいって言われてもいい……


生きてさえ……
生きてさえいてくれたらよかったのに……


涙が止まらなくて……
ぐちゃぐちゃの顔になって、僕は電車から降りていた。


幸せだった40分間。


早く君に会いたいよ。
沢山たくさん話をしようね。


もうちょっとパパ頑張ってみる。