いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

立ち止まって雨に濡れて

長い長い悲しみという大雨の時期は終わった。


再び太陽が顔を見せ、遺されたものは少しずつ日常を歩みだす。


太陽に照らされた道を歩いていこう。
僕たちの過ぎた道に黒雲はとどまっている。


歩かなきゃ……
前に進まなきゃ……


でも分かってる。当たり前のことなんだ。


終わらない雨はない。


そして、終わらない晴れの日もやっぱりない。


ここ数日、またガクンと落ち込んでしまっている。
仏壇と向き合って、いー君に話しかける時間。
たくさんの悔恨と、沢山の謝罪……涙があふれて止まらないんだ。


勉強なんかおいたてずにのんびり過ごさせれば、今より幸せだったのか。


彼女なんか作らせず、ダメな小太りの男の子のままだったら……そう思うんだ。


2年前の大みそかの日……


僕はいー君を怒ったんだ。
だらしなく太り始めた姿。だらしない夜型の生活。勉強の成績が急降下していた。


彼は心を入れ替えた。


身体を絞り、規則正しい生活を送り始めた。


綺麗で可愛い彼女ができた。学校でも成績は優秀になった。


だが、優秀であるがゆえに、進路に悩み苦しんだ。


彼女ができた故に、しなくていい辛い想いに絶望し命を絶った。


駄目でよかったんだよ。
負けたってよかった。
逃げたってよかった。


やり直したい。やり直せない……


心臓が掻き毟られるような、果ての無き後悔。
池を作れるほどの血と一緒に吐けるような、尽き果てぬ呪詛の言葉。


あの時ああしていれば。
あの時こうしてやれば。
あの時もっと話せれば。


立ちなおってなんかいない。立ちなおれるはずなんかない。


また僕の心の中に雨が降り始めた。


長く……昏く……冷たく……真っ黒な雨が。


傘なんかいらない。僕は濡れなきゃいけないんだ。


そうさ、分かってる。……降りやまない雨なんかない。


だからとことんまで雨に打たれ、撃たれ、討たれよう。


このしぼんだちっぽけな僕の心胆をとことんまで痛めつけよう。


きっとそれは、僕が背負った十字架だから。
自分の道の終焉まで地に下ろせない、重い重い十字架だから。