いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

発泡スチロールだらけの波打ち際で

ちょうどこの季節……むかし何度も行った越前海岸の呼鳥門のことを思い出す。


海岸線にせり出した大きな侵食された岩のアーチ……そんなにすごいもんでもない。
前のレストハウスにある日本庭園風のトイレ……凄いといえば凄いけど。


なんで何回も行ったかっていうと、気軽にオールシーズン海の岩場でヤドカリをとったりして遊べることと、日帰りドライブにちょうどいい距離だったことからだろう。


いー君とタイドプールのハゼを捕まえようとしたり、ヤドカリを捕まえたり……


楽しい時間を過ごしたんだよね。


いー君がお父さんになった時、ここに子供を連れてきてやってほしい。
そんな願いもあったんだ。


そして、帰り際夕陽の中を、名もない砂浜に車を止めて海で遊び足りない、いー君を遊ばせてあげた。


ちょうど丸い円盤状の意思がたくさんある場所だから、海に投げて跳ねさせて遊んだよね。


何度も何度も夢中になって海へ石を投げていた君。


真っ暗になるまで、夢中で嬌声をあげて遊んでいたよね。


海には、近くに漁協があるからか、綺麗な水なんだけど大量の発泡スチロール片。
そんな風景を僕は今でも鮮明に覚えている。


君がお父さんになった時、僕の血を引く孫が同じことをできますように。


全てはむなしい願いだったのかもしれない。


僕の願いは断たれてしまった。


でも……意味があったんだと思う。


君という人間が、確かにこの世界に存在したこと。


僕たち家族の共有した楽しい幸せな時間が、確かに存在したこと。


夕日を浴びた、力いっぱい輝く君の笑顔。


どうしてこんなことになっちゃったんだろうね。


僕はまた、いつかあの場所へ車を走らせよう。目に見えない君を助手席に乗せて。


あの時の夕陽が……
あの時の楽しかった時間と何も変わらぬ夕陽が……


奇跡を起こして、君の姿を浮かび上がらせてくれるかもしれないから。