たくさんの悲しみはあるけれど
最近少し落ち着いてきたような気がする。
酷薄なわけでも無神経なわけでもない。少し割り切れてきた。
悪魔に魂を売ったって、いー君は生き返らないということ。
そんなことしたって、いー君は喜ばないこと。
いつまでも泣いていたって、いー君は生き返らないってこと。
いつまでも泣いていたって、いー君は喜ばないってこと。
こう考えたんだ。
いー君の命は、僕と妻がぶつかって生まれた『命の支流』だ。
そしていー君は、新しく生まれたもう一つの支流……妹を含めた、僕と妻の3本の河に合流したんだ。
そして僕たちが生き続ける限り、僕たちの中でいー君の『魂の水量』は減ることもなくずっと流れ続けている。
僕と妻が死んだら、娘にいー君の魂の水量も含んだ僕たちの魂の水量は、ずっと引き継がれていく。
そして、娘が子供を産めば、僕たちの魂の水量は減ることもなく、生まれた子供の数だけ支流となって引き継がれて流れていく。
娘が先に……子供を遺さなかったらどうなるかって。
何も怖くなんかない、そこが海に流れ出る河口だから。
僕たちという魂の水流は、海というゴールについて大海の海水になるだけだ。
そしたら、いー君を含めたみんなで抱き合って、お疲れ様……っていうんだ。
誰もどこへも行かない。
もう離れることはなく、ずっと一緒にいられる。
ちゃんと胸に手を当てれば、いー君は僕の中でしっかりと生きている。
どこへも行かず、何も減ることはなく、僕たち3人の家族の命の河に合流して、しっかりと流れている。
僕と妻から別れた支流が、僕たちの中に帰ってきただけなんだ。
どこにも行かない……
何も僕たちは失っちゃいない。
昨日も今日も、明日も明後日も……
僕はいー君の命と一緒に日々を生きていく。
次に泣くのは……
僕が頑張りぬいて、生き抜いて……
お浄土でいー君と出会えて、抱きしめ会ったときにしたいね。
すぐに会えるから。
必ず会えるから。
急がなくたって必ず会えるから。
急いでいー君に会おうとしなくたって、ちゃんと会えるから。
だから、のんびり歩こう。
急がなくても、ちゃんといー君は先回りして、家族をちゃんと待っててくれる。
いー君、僕たちはもう少しのんびり歩いて行くよ。
パパ、精いっぱい頑張るから、明日も僕と一緒に生きていこうね。
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