君が紡いだ美しき短編小説
今日も寝たきり。立ち上がることさえできない。
ASD特有の虚脱症状なのは分かっている。人並みに何か一生懸命になると精神力の燃費が悪いから、必ずこうやって魂が抜けてしまう時間が来るんだ。
時計がどんどん時を刻み、意識を失っては起きて、動かなきゃ……と思いながらまた意識を失う。
リビングのソファに飾られたいー君の遺影の一つ。
なんか申し訳なさそうに写っているあんまりいい写真じゃないんだけど、学校での葬儀の際に学校にある写真で、豪華な遺影を作ってくれて最後にこっちにくれたもんだから、捨てるわけにもいかず、こうやってリビングに飾っているんだ。
僕の胸の上で、2匹のわんこが僕を守るように丸くなって寝息を立てている。
意識を取り戻しては、いー君の遺影を見つめてため息が漏れる。
こうやって鬱々として、刻々と時間だけが過ぎていく毎日。
きっと僕の人生という文学作品は、つまらなくて卑小で冗長と続くのだろう。
長編作品が必ず良作ではない、それは当たり前のこと。
短編作品の中身がみんな薄っぺらいわけじゃない。それも当たり前のこと。
自分の作品を書き切って、自らの意思でペンを止めること……
ときには苦痛を伴い、ものすごく勇気がいることなんだろう。
でも、本人が満足してペンを止め、『Fin』と書きこんだんだ。
いかな彼の人生が短い作品とはいえ……
僕は我が子が書いた作品を原稿用紙の枚数だけで判断していないか。
もっと書きたかったよね、とか……勝手に思い込んでやしないか。
僕たち周りの人々に愛され、美しい絵描きの女の子と燃えるような恋をした……
そして彼女との小さな行き違い……
そして主人公のいー君は、あえて壮絶な最期を書ききり、ペンを置いた。
たった17ページの、彼があえて短編で描き切った彼の人生という短編小説。
彼は自分の書きたいことを全部書き切っちゃったのかもしれないな。
作品を長短だけで決めてしまったら……いー君怒るよね。分かってないって。
君の作品を誇りに思わなきゃ。
これが大切な、僕の息子の作品ですって……胸を張らなきゃね。
何とか僕も、体勢を立て直さなくちゃ。
いー君が書きあげた、素晴らしい短編小説を……たくさんの人に見てもらわなきゃ。
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