いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

いたずらはいいから出ておいでよ

今日はいー君の3回目の月命日。


お坊さんが来るのはお昼から……
仏間掃除しなきゃなぁ、とか考えながら朝の惰眠をむさぼっていた。


ヴーン……
ヴーン……
ヴーン……


(あれ、土曜日はアラーム鳴らないはずだけど)


寝ぼけ眼の僕は、枕元に手を伸ばしスマホを手に取ってみた。
何にもアラームは鳴っていない。


耳を澄まして、そちらの方向を見た。


オレンジ色のおかきの空き箱の中。
そして僕はその意味を理解した。


アラームが鳴りやみ、起きて僕はその箱を開けた。
3年前ほどに使っていた、韓国製の古いスマートフォン。
半日で電池が切れちゃうから、すぐに買い替えて完全放置してたんだよね。
もちろん電源なんか入りやしない。完全に電池が切れてるからね。


そう、それは3か月前、いー君の告別式の朝。


『びっくりしたで、今朝、完全に電池の切れてる携帯電話のアラームが鳴ってん』
僕の親父が、朝一番興奮気味に僕に話しかけてきた。僕の母親も一緒になるのを聞いてて不気味だったと話した。


不思議なこともあるもんだね。
きっといー君がいたずらして鳴らしたんだよ……そう話してたんだ。


そして、今日……
僕の絶対に鳴るはずのないスマートフォンのアラームが作動したんだ。


不思議とも怖いとも思わなかった。


ただ、いー君が僕のそばにいてくれる。僕を見守っていてくれる。
それが嬉しくてうれしくてたまらなかったんだ。


バレンタインデーの夜に、仏間のろうそくを勝手につけたり……
こうして電池の切れたスマホのアラームを鳴らしてみたり……


君は『ここにいるよ』が言いたいんだよね。
大丈夫。
僕もママも、君の大切だった妹も、何も変わらない。どこにも行きやしない。


パパも、頑張って今は前へ歩いていこうと思うんだ。


いー君が先にお浄土に行ったのは、とってもさびしいことだけど。
でも、僕はいー君が待っているのがわかっているから、死んだりすることは全然怖くないんだよ。


ただもうちょっとだけ……


もうちょっとだけ……


ママと一緒に過ごさせてね。


ママと出会って半年……いー君がママのお腹の中にいることが分かったんだよね。


パパとママはすぐにいー君が来てくれたから、全然ゆっくり一緒にいられなかったんだ。


もう少しだけ……
もう少しだけ、ママと楽しい時間を過ごさせてね。


いー君。いたずらばっかりしてないで、たまには夢で姿を見せてよね。


ちゃんとそばにいること……パパわかってるから。


もうちょっと頑張ってみるね。