お経の時はお静かに
今日は息子の月命日だった。
正直ぎりぎりまで迷ったんだ。犬をどうしようかと……預けるかどうしようか。
お坊さんが来たら、ワンワン激しく吠えるだろうし、法事にもならないんじゃないかと思って。
でも、預けるにも2匹で2000円かかるし……
先月来てくださったお坊さんは、犬がいても大丈夫ですよとおっしゃられてたし。
今月駄目だったら、来月は預けよう……とのことで、あえて犬は家に置いておくことにした。
今日来たお坊さんは若い人。
30代前半だろうか……前回の初老のお坊さんが来ると思っていただけに意外だった。
そしたらやっぱり犬が吠える吠える。大丈夫かいなと思ったが……
本当に不思議だった。
お経が始まると、ぴたりと犬二匹は鼻をクーン、クーンと鳴らすだけで吠えるのをやめた。
お坊さんのお経を静かに聞いていた。
まるでちゃんと全部理解しているかのように。
滞りなく月命日の読経は終了。
若いお坊さんと話してみると、なんと僕の大学の後輩だった。
不思議な縁もあるもんだ。これも息子が結んでくれた仏縁だろう。
聞けば、どこの犬がいる家庭も、お経が始まると吠えるのがぴたりと止まるそうだ。
ともあれ、今日は無事に済んでよかった。
家族の中になんとなく……だけど、徐々にいー君の死をみんな受け入れつつあるような気がしている。
娘も……嫁も……
彼女たちは彼女たちなりに、このつらい現実を呑み込み始めているんだろう。
娘の方は、これから中学生……大変な時期だ。
何としても、この子はちゃんとせめて成人は迎えてもらわないと。
僕も頑張らなくちゃね。
いー君、今日も素晴らしい人に引き合わせてくれてありがとう。
ずっと僕たちと歩いていこうね。
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