いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

『僕はここにいるよ!』

2月14日午前0時……


とても不思議なことが起きた。


僕が自室からリビングに降りてきた。
嫁と娘が、テレビを見ている。
わんこ達が、のんびりとソファーで寝息を立てている。


(あれ……)


真っ暗のはずの仏間に、何か明かりがついている。


ろうそくだ……ろうそくに火がついて揺らめいている。


線香は時々つけるんだけど、我が家でろうそくを付けることはない。
さすがに防火面で危ないからね。
でも、誰がつけたんだろう。当然ながら、家には嫁と僕と娘だけ。


嫁と娘に、ろうそくを付けた?と聞いてみる。
2人とも顔を見合わせ、首を振った。


ろうそくは先週お坊さんが月命日の法事で点灯して消してそのままになっていた。
ほとんど減っていない、ということはいま点いたばっかりなのだ。
何よりも、唯一の着火道具であるマッチを使った形跡がない。
なんで点いたんだろう……誰が点けたんだろう。


バレンタインデーの午前0時。
いー君は、僕らに何か伝えたかったのかな。
去年の今頃は、彼女と幸せに過ごしていたもんなぁ。


僕はいまでもここにいるよ。
パパとママと、妹をずっと見守っているよ……


そう伝えたかったのかもしれないな。


うちではいー君がいなくなったあの日から、彼の部屋で足音がしたり、こんな不思議な事が時々起る。


怪奇現象だとかオカルトだとか……そんな無粋なことを騒ぎ立てるつもりはないんだ。


ただ、あるがまま……起きたことを好意的に受け止めるようにしているんだ。


いー君が家にいて、僕たちをずっと見守ってくれている。
その事実だけがあれば、何もいらない。
少しだけ、気持ちが前向きになってきた。
いー君が、ずっとそばにいてくれる。それだけで十分なんだ。


ありがとう。いー君。パパ頑張らなくちゃね。


でも、火遊びは危ないよ。誰もいないときに、ろうそくつけちゃだめだよ。