アスファルト色の毎日
もう戻ってくることはない、楽しい日々を思い出し目が覚める。
僕がまだ健康で、当たり前に家族4人が集って……わんこ達がしっぽを振りながら走り回って、笑い声の絶えなかったあの日。
そして、いー君がいなくなって、僕が統合失調症を悪化させて休職している現在……
いー君の所へ行かなきゃ……
いー君の所へ行かなきゃ……
リビングに入ると、全力でしっぽを振ってしがみついてくるわんこ達。
自分が逝けば、この子たちを置いていくことになるんだよな。
そして、あの地獄の日を思い出す。
めったに感情を見せない妻が、天を仰いで慟哭した日。
僕のせいで、もう一度あれを繰り返すのかもしれない。
お浄土で会ったら、もう口もきいてくれないのかもね。
どうしたらいいのかなぁ……とか考えているうちに、刻々と時間は過ぎていく。
悲しみを振り切って、前を向いて立ち直りましょう……
みんなはそういうけど……やっぱり簡単じゃないんだよね。
こうやって、アスファルト色の毎日を過ごして、無為に生きるほうがよほど意味がないのかもしれない。
でも、遺すものが大きすぎて。
障害者の僕にはそれを守りきる責任感も能力もない。
さりとてそれをバッサリと斬り捨てる非情さも持ってないんだ。
どうしよう……
どうしたらいいんだろう……
そんな自問を繰り返して、時間だけが無為に過ぎていく。
いー君に僕たちは斬り捨てられたのかも知れない。
でも、斬り捨てさせる原因を作ったのも僕たちなんだ。
早く訊きたいんだ、いー君の真意を。
君が主人公の世界で……僕たちは簡単に切り捨てることができる存在だったのか。
葛藤したんだよね、いー君も……たぶんこうやって。
君の所へ飛び出せる……踏切板を踏み越える勇気がほしい。
わんこ達が今、僕の顔をじーっと見てる。
この子たちは、僕たちと違って命を貫けるのかな……
妻と娘は、頑張って命を貫けるのかな……
もう少し……もう少しだけ考えなきゃ。
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