お弁当ごちそうさま。
どんな気持ちで食べたんだろうな……
お昼休み、昼食の時間。
いつもと変わらない、嫁のお弁当。
結婚してから18年。いつもと変わらないおかずの編成だ。
とりあえずローテーションでハンバーグとかいろいろ詰めてあって。
そして、余ったスペースをブロッコリーで埋め尽くす。
たぶん、いー君への高校時代のお弁当も、ずっと同じ感じだったんだろうな。
いー君が最後だったあの日。
君は、高校を早退して……最後にママの車で帰る途中、お昼に食べるはずだったお弁当を車の中で全部食べたんだよね。ごちそうさま、って言って全部。
どんな思いが胸に去来していたんだろう……
あの時、君は素直にママに想いを打ち明けていれば……
いや、たぶんもう頭の中に、遺される家族のことなんかなかったんだよね、きっと。
そうなんだ……
僕の大切な奥さんは、毎朝早く起きて、家族のために一生懸命お弁当を作ってくれているんだよね。
いろんな思いを込めて。
いろんな想いを込めて。
作られた方は……その気持ちをちゃんと受け止めなきゃいけない。
当たり前のことかもしれないけど、見落としてたこと。
今日、一つ一つ妻の想いを噛みしめて……僕も全部平らげた。
いつもはブロッコリーを残すんだけどね。
いー君が食べた、最後のママのお弁当……ちゃんと最後まで食べたね。偉いね。
いや……最後じゃない。
いまだってパパの口を通して、君はママのお弁当を食べているのかもね。
僕の胸の遺骨ペンダントの中に君がいるから、いー君はいつも一緒だもんね。
明日もパパと一緒に食べよう。
ママが作ってくれた、大切な美味しいお弁当を。
ブロッコリーは、いー君の担当だからね。
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