もう少し勇気があれば
いつものように、仏壇のお線香に火をともし、正座して茫然と座り込む。
君のピースサインの写真と、沢山のお供えのお菓子。
そしてその後ろには、変わり果てた君の遺骨の箱。
世の中悲しいことばかりじゃない。
もちろん楽しいことばかりじゃない。
最近は、仏壇の前に座って溜息ばかり。
いー君は、すべてを捨てる勇気があったんだね。
遺されたものを振り切って、死への踏切板を超えた勇気。
僕が長い人生の中で、何度もためらったことを、君は迷わず一回でやりきってしまった。
最近は、僕も頑張れば死への踏切板を飛べそうな気がするんだ。
でも、どうしても君のママの悲しみと、君の妹の悲しみ。
そして遺された2匹のワンコのことを考えてしまう。
それさえクリアできたなら、僕はもうためらいもなく君の所へ行けるんだ。
君が最期に教えてくれた、即時にブラックアウトできる終わり方……
それを知った以上、必ず成功できる自信があるんだ。
どうしたらいいのかな、いー君。
もうちょっとで……もうちょっとで君の勇気に手が届きそうなんだ。
パパの背負ってる荷物が、重くて重くて……
投げ捨てる勇気が、もう少しだけ足りないんだ。
来年の……
来年の今頃は、君の所に会いに行けそうな気がするんだ。
寂しいだろうけど、パパ……
もう少ししたら、君に会いに行けると思うんだ。
もう少しだけ待っててね。
きっと……きっと君に会いに行けるから。
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