少しの時間だけど『君』でいてほしい
いつもと変わらぬ、京都発奈良行きの快速電車。
僕は窓側の席をとり、電車の発車を待つ。
夕方4時だ……一人で2人掛けの椅子に座れないことは分かっている。
毎日いろんな人が座るんだ。
外国人の人、年配の男性、妙齢の女のひと。
もう誰でもいいんだ。興味とかそういうの無くなっちゃった。
シャカシャカシャカシャカ……
シャカシャカシャカシャカ……
イヤホンから漏れる、不愉快な音楽っぽい音。
高校生くらいの男の子だ。
昔ならイライラしたのかもしれない。怒鳴ったかもしれない。
でも、腹立ちより前に、愛しかったんだ。
いー君の同じ歳くらいの子。
モラルがないのかもしれないけど……本人はどこ吹く風。
そのうち、イヤホンで音楽を聴きながら、一心不乱で携帯ゲームをやりだした。
いー君そっくりだな……ちょっと苦笑する。
いー君も生きてる時、ちょうどこうやって電車通学していたのかもしれない。
こうやって……
こうやって……
いつしか涙が出てきた。嗚咽になる。
隣の男の子は気付かずに、一心不乱にゲーム中。
いー君が乗り移って、僕の横に座ってくれたのかもしれない。
幸せでとっても悲しい時間。
涙が止まらなくて……
悲しくて……嬉しくて……
とってもとっても幸せな時間だった。
常識とかそんなものは、後回しでいいんだよ。
精一杯生きてほしい、どこかの駅であわてて降りていく少年の背中に、僕はそんな言葉をかけて泣き崩れていた。
どんなに悪い子でもいい。
親の顔が見たいって言われてもいい……
生きてさえ……
生きてさえいてくれたらよかったのに……
涙が止まらなくて……
ぐちゃぐちゃの顔になって、僕は電車から降りていた。
幸せだった40分間。
早く君に会いたいよ。
沢山たくさん話をしようね。
もうちょっとパパ頑張ってみる。
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