発泡スチロールだらけの波打ち際で
ちょうどこの季節……むかし何度も行った越前海岸の呼鳥門のことを思い出す。
海岸線にせり出した大きな侵食された岩のアーチ……そんなにすごいもんでもない。
前のレストハウスにある日本庭園風のトイレ……凄いといえば凄いけど。
なんで何回も行ったかっていうと、気軽にオールシーズン海の岩場でヤドカリをとったりして遊べることと、日帰りドライブにちょうどいい距離だったことからだろう。
いー君とタイドプールのハゼを捕まえようとしたり、ヤドカリを捕まえたり……
楽しい時間を過ごしたんだよね。
いー君がお父さんになった時、ここに子供を連れてきてやってほしい。
そんな願いもあったんだ。
そして、帰り際夕陽の中を、名もない砂浜に車を止めて海で遊び足りない、いー君を遊ばせてあげた。
ちょうど丸い円盤状の意思がたくさんある場所だから、海に投げて跳ねさせて遊んだよね。
何度も何度も夢中になって海へ石を投げていた君。
真っ暗になるまで、夢中で嬌声をあげて遊んでいたよね。
海には、近くに漁協があるからか、綺麗な水なんだけど大量の発泡スチロール片。
そんな風景を僕は今でも鮮明に覚えている。
君がお父さんになった時、僕の血を引く孫が同じことをできますように。
全てはむなしい願いだったのかもしれない。
僕の願いは断たれてしまった。
でも……意味があったんだと思う。
君という人間が、確かにこの世界に存在したこと。
僕たち家族の共有した楽しい幸せな時間が、確かに存在したこと。
夕日を浴びた、力いっぱい輝く君の笑顔。
どうしてこんなことになっちゃったんだろうね。
僕はまた、いつかあの場所へ車を走らせよう。目に見えない君を助手席に乗せて。
あの時の夕陽が……
あの時の楽しかった時間と何も変わらぬ夕陽が……
奇跡を起こして、君の姿を浮かび上がらせてくれるかもしれないから。
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