いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

あの子からの電話と、妻を支えられない僕

嫁のつんざくような悲鳴と、錯乱した喚き声が階下から聞こえたのは、息子がセレモニーホールへと出立する数時間前のことだった。


信じたくことが起こったんだ。


息子の彼女からの……息子をが最後まで想い続けた彼女からの電話が、息子のスマホにかかってきた。


電話をとった嫁は、狂わんばかりにわめき、泣き叫んだ。
娘が代わりに、彼女との応対に回る。


脱力して崩れる嫁、支えられない僕。


息子の死を信じられずに電話してきたらしい。まったくとんでもないタイミングで掛けてきてくれた。


だが、僥倖でもあった。
ずっとわからなかった息子のスマホのロックパスワードを彼女が知っていたのだ。


知らなかったほうがよかったのかもしれないが……


生々しい息子の死の直前のメールのやり取り。


くだらない痴話げんか、無視したのしてないの。


スマホを操作のため、警察に預ける。


だが、これが嫁にとどめを刺した。


警察は捜査のため、着信履歴をさかのぼり、嫁の携帯電話に息子のスマホから電話をかけたのだ。


嫁の携帯に息子の着信表示……
来るはずのない電話に、淡い期待を抱いたのか……嫁は狂ったように電話をとった。


当然ながら、刑事さんだった。


残酷なことをしてくれる。
嫁はさらに崩れ、もう手がつけられなくなった。


そのタイミングで、息子がセレモニーホールに向けて搬出された。


息子の体は……もう肉体のまま、この家には帰ってくることはない。


嫁がいやだいやだ、と泣き叫ぶ。
僕とはまた違う感情を息子に抱いている。当然だろう。
僕だって号泣したかった。
でも、耐えて嫁の背中をさすった。僕には一家の大黒柱としてそれしかできなかった。


葬儀会社の寝台車が、セレモニーホールへと出立する。


いよいよお通夜だ……


こんな形で初めて喪主になるなんて。
おやじかお袋の時だと思っていた。


誰が想像するんだよ、息子の喪主なんか……


PVアクセスランキング にほんブログ村