いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

こどもをそだてるおべんきょう

いー君が逝ったあの日で止まっていた、錆ついた時計の日々がまたゆっくりと動き始めている。


僕が復職のために通う、障害者職業訓練センター。


そこにはいろんな人たちが通っている。


すぐにパニックを起こす人。
自分の意思をしっかり伝えられない人。
大きな物音をたてて傍若無人にふるまう人。


みんな適切なケアを受けられずに、大人になって苦しんでいる人たち。


僕だってそう。
ちゃんと障害者として、一般の人と隔絶されて生きていれば……
ちゃんと人の迷惑がかからないように、生きていたはずだ。
結婚もしなかったし、子供を産んで、妻や子供を苦しめることもなかった。


いー君と出会えたのは、本当に素敵な人生の出来事。
いー君と過ごした日々は、本当に素敵な人生の出来事。
でも……
いー君は、僕なんかから生まれることがなかったら、たぶん苦しみ悩むことはなかったんだ。
僕が健常者の人の社会に紛れ込むことがなければ……誰も傷つけず、自分だけが傷つけばよかったんだ。


僕は、子供を育てる勉強もしなかったし……
そもそもが、そんな事をできる能力なんか持ち合わせてなんかいなかったんだ。


ちゃんと、子供を育てきるしっかりとした勉強ができていたならば……
僕に、子供を理解し話し合い、問題を解決できる能力があったなら……


いー君は、大きくなって、幸せに育っていたかもしれないのに。


僕は黙々と、復職訓練で、課題のねじ部品を組み上げている。


ちゃんと子供のころに、僕が何者か自分で理解できていれば……
ちゃんと両親が僕の異常に気付き適切なケアをしていてくれたならば……


僕は……


僕は、いー君につらい選択をさせずに済んだかもしれない。


なぜ……


なぜ学校は、子供をしっかり育てきる方法を教えてくれなかったんだろうか。


なぜ両親は、子供をしっかり育てる方法を教えてくれなかったんだろうか。


僕なんかが歳を重ねても意味がないのに……


いー君に……
いー君に歳を重ねて、大きくなってほしかったのに。


こんなことになる前に、ちゃんと勉強しておきたかったよ。


子供を大きく育てる方法を……
一人前の大人に育てる方法を……