僕と妻と娘と犬たちと、そして亡骸と
息子が帰ってきた。冷たくなって。
死んだときの表情と違い、すごく柔和になっていた。
検死のあと、表情を整えてくれたのだろう。
なんか微笑んでいるような……何かをやりきった満足感のような……
その表情だけが僕たちの救いだった。
娘が息子の亡骸にしがみつき、泣いていた。
どう声をかけていいのか……自分の無力さを痛感する。
よその家庭の父親だったら、うまく何か言えたのだろうか。
集まっていた親せき一同が帰って行き、妻のお姉ちゃんだけ残してだれもいなくなった。
お姉ちゃんは、妻が心配なのと、僕たちが犬に気にせず息子の亡骸といっしょに過ごせるように、と気を遣ってくれたのだ。
僕たちは、やりきれない気持ちで、息子の亡骸といっしょにすごす。
首を吊った後の変色が、痛々しい。
彼は何を思い、どんな思いでこの世を去ったんだろう。
厳しくやり過ぎたんだ……子供のためを思って厳しくやってきたことが、結果として息子と僕のコミュニケーション不足で、相談してもらえなかった。
うっすらと恋愛トラブルだ、ということは聞いていた。
でも、僕が厳しくしたこと、そして後述するが僕が統合失調症のせいで入院して、長期休職したことも、絶対に一つの理由だったはずだ。
僕が息子を間接的に、死に追いやったのかもしれない。
悔いても悔いても、悔やみきれない。
あきらめ。
ため息。
そして時計の秒針を刻む音……
泣いてはため息、泣いてはため息……
まだ何が起こったか理解できないでいた。
いや、脳が理解することを拒否していたのかもしれない。
やがて僕はまどろみに落ち、気がつくと朝になっていた。
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