帰ってこない「おかえりなさい」
息子を警察で検死して、遺体を返してくれるのは、死んだ翌日の昼過ぎということだった。
午前中、どう過ごしていたか……
何をしていたっけなぁ。
葬式の準備とか、いろいろバタバタしてたような気がする。
とにかく夫婦ともに、じっとしていたら気が狂いそうだったから。
僕と妻、両家の両親が健在なのも、皮肉な話だ。
まさか書く両親とも、孫が先に逝くなんてだれも思ってなかっただろう。
そして、息子は帰ってきた、ちょうどお昼の12時に。
妻と警察署に逝って、調書と検死結果を伝えられた。
どうでもよかったんだ、結果とか経緯とか。
早く息子に会わせてくれ、それだけだった。
知らなかった。警察署の奥に死体安置用の冷蔵庫があることなんか。
重いステンレス製の扉が開いた。
息子が眠っていた。
妻だけじゃない、僕も泣き崩れた。
冷たい……
息子の体は、びっくりするほど冷たかった。
お帰り……お帰り!
僕は泣きながらずっとそう叫んでいた気がする。
息子が家に帰ってきた。
ありきたりの表現だが……無言の帰宅だった。
彼の体は帰ってきたけど……
もう笑わない。動かない。
冷たい…冷たい……氷のような体。
当たり前に続くと思っていた家族の日常……
これはもしかしたら夢なんじゃないか、わずかに残っていた一縷の望み。
彼の体の冷たさが、愚かな僕の夢想を打ち砕いた。
息子は帰ってきた……でも、僕はもう帰ってこない。
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