蒙古斑
日付が変わった。
今日は自死に向き合う関西僧侶の会の方々が開いてくれる、自死者の合同法要の日だ。
思えばもう1年になる。早かった。
思い切り泣いてこようと思う……最近自分の気持ちを吐き出す場所が無かったから。
ふと息子の事を思い出していたんだ。
彼が死に踏み切る数日前……
彼がカラオケに行きたいと言ったのを、お小遣いが無いし時間的に厳しいからダメだと断ってしまった後悔。
彼の小さかったころの、色あせたセピア色の記憶。
そして……蒙古斑の場所。
なんでこんなことを思い出してしまったんだろう。
でも、間違いなく僕の子供だっていう大切な印だった。
ぼくは太ももの内側に、日の丸のような蒙古斑がある。
そして息子の太ももの裏側にも、やっぱり同じ大きさの蒙古班があった。
ぼくも子供である、遺伝の証。
ずっと引き継いでくれるかもしれない、小さな印。
でも……もう彼の肉体はこの世には存在しないんだ。
もう彼の身体は、地上には存在しない。分かってるけど、ものすごく悲しいこと。
やがて僕の身体も、この世からなくなる。
僕の太ももの内側の『小さな物語』は、誰に継がれることもなく幕を閉じる。
蒙古斑。ぼくが息子へ引き継いだはずの物語。
でもその小さな物語は、誰に知られることもなく消えてしまうのだろう。
だから、僕はこの電脳の海に小さな物語を記しておこう。
ぼくが渡したはずの、何千年何万年という祖先から受け継いだ物語。
ぼくより先に消えてしまって、行き先を失った物語。
どこかで誰かが、海岸に流れ着いた小瓶の手紙のように拾われることを祈って。
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