長い長い……最後の夜
お通夜が終わった。
お坊さんはもう帰られてしまった。
能登の地元の名士だった叔母の同じ浄土真宗の葬儀は、住職さんが残っていろいろ法話をしてくれたんだけど……
そこがやっぱりいろいろ、檀家じゃないとかあるんだろうな、と思った。
叔母のときは、いろんな寺院からお坊さんが6人くらい来られて一斉に読経されてたもんな。
まあ、規模も経費も天と地の差があるんだから仕方ないんだろうけど。
ちょっとさびしかったけど、一般の葬儀なんてこんなもんだろう。
そして、参列者の親族がみんな帰っていく。
家族のほかで残ったのは、嫁のお姉ちゃんと、うちの母親。
後は一晩、残されたもので息子と……息子の肉体との最後の夜を過ごすことになった。
冷たくなった息子の亡骸を何度もなでてやる。
話しかけたり、号泣したり……最後の夜だと思うと……明日の夜には遺骨になっていると思うと、とにかくたまらない気持ちになる。
話しかけては……息子が小さいころ好きだった「大きな古時計」をうたってやる。
息子は、時間を追うごとに、刻々と微妙に表情が変わっていた。
そして最後の夜の息子は、何か大きな仕事を成し遂げたような、満足そうな優しい笑みをたたえて眠っていた。
それが何か救われたような気持ちになる。
ありがとう、御苦労さま……何度も何度もそんな言葉を息子にかけた。
正直信じられてない……まだ、息子の死を受け入れられていない。
当然と言えば当然なんだろう。
かくして長い……長い最後の夜は更けていく。
明日には……息子の肉体は存在しないんだ。
冷たい……冷たい息子の亡骸の額をなで続けていた。
安らかな……それは安らかな死に顔だった。
ありがとうね……
パパのところに生まれてきてありがとうね……
さよなら……
パパも死んだら、いっぱいいっぱいお浄土で一緒にお話ししようね。
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