幻のパスポート
そういえば……
息子の修学旅行って、生きていたらそろそろだったのかな。
シンガポールだったそうだ。
写真を撮って、手続きして……息子のもとに届いたパスポート。
もうそれは、使われることもなく、我が家に寂しくたたずんでいる。
君が手にしたのは……天国へのパスポートだったよね。
そんなモノ、急いで取得しなくてもよかったのに。
君がもし生きていて……
海外のものを見聞出来たのなら。
また人生観が少しでも変わっていたのかな。
小さく狭い箱庭で……
君の17年だけの経験だけで色々考えて。
それでも一生懸命考えて、選択した道。
君は、海外へのパスポートより、天国へのパスポートを選んだんだよね。
君が選んだ道だから……信じてあげなきゃ。
人よりとても短い17年と言う生涯。
それでも、ぎっしりと詰まって一生懸命生きた、太くて短い道。
君を信じてあげなきゃ。
家族として、父親として。
君を信じてあげなきゃ。
僕はもう少し回り道して、君の所へ行くよ。
君の17年じゃ経験できなかった沢山の事を知って……
そして会えたら、いっぱいいっぱい君としゃべるんだ。
君を信じてあげなきゃ。
君を信じてあげなきゃ。
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