主なき室外機
窓の外を自室から眺める。
カラスザンショウの樹と……いー君の部屋のエアコンの室外機。
もうおそらく動くことはない。
主なき部屋のエアコンの、主なき室外機。
いー君は優しい子だったから、電気代がもったいないってめったに使わなかったっけ。
それでよく熱中症になって、学校を休んだんだよね。
いや……分かってるんだ。熱中症じゃなかったってことは。
学校を休みたかったんだよね。いろいろいー君悩んでたみたいだから。
僕も何も言わなかったけど……
何か声を掛けてたら、運命変わっていたのかな。
もう室外機のファンは回らない。
誰もいない部屋で動くことのないエアコン……
いー君の部屋はあの時から完全に時間が止まったまま。
攻めて、検視した警察の人の汚した絨毯は綺麗にしたいんだけど、何度こすってもダメ。
動かない室外機を見るたび……僕は現実に引き戻されるんだ。
もう動かない室外機……
冷たい雨に打たれて、泣いているように見えた。
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