いー君といっしょ

2015年11月20日……
最愛の17歳の息子を自死で失いました。
悲しみの記録と、彼の歩んだ道、そしてこれから残された家族三人の日々を記します。

歌を継ぐもの

お世辞にも上手と言えないわめき声のような歌が、リビングから聞こえてくる。


いー君の妹の声だ。


スマホを買ってやったから、そこから動画を見てイヤホンをして一緒に歌っている。


いー君も歌が好きだった。


いつもイヤホンをして歌っていたっけ。


妹は正直近所迷惑レベルの下手さなので、なんとかしたいが……


まあ、娘に歌声が戻ってきた……
それはそれで寿ぐことなのかもしれない。


お兄ちゃんの想いを受けて歌っているのかもしれない。


娘の歌声は、お兄ちゃんが歌えなかった分の歌声。


そう思うと微笑ましい。しばらくそっとしておこう。


いつかきっと上手になる日が来るのかもしれない。


そう、お兄ちゃんがついてるからね。


歌え、心のままに。


歌え、力強く。


お兄ちゃんが歌えなかった今という世界に……心のままに感情をぶっ放せ。


歌声が戻ってきた……


忘れかけていたものが……ウチに戻ってきたんだ。


今日はもう少しこのまま……


娘の下手な歌に付き合うとしよう。