看板と祭壇と……そして特製の棺と
息子の亡骸が家から運び出され、セレモニーホールについていた。
僕が母親を連れて到着すると、豪華な通夜と告別式を告げる看板が式場の前に建てられていた。
息子の名前が書かれた看板を見て、現実に引き戻される。
まさかこんな看板を目にする日が来るとは……
祭壇は家族葬用の小じんまりしたものであったが、それでも十分すぎるほど豪華だった。
実は僕も大学時代……葬儀屋のアルバイトをしたことがある。だから、棺桶の良しあしとかのだいたいの見分けはつけることができるんだ。
息子の棺は明らかに豪華だった。
正直、経済的に余裕がない今、こういうところは金をケチるところかもしれないが……
でも、大切な僕の息子だ、ここは金に糸目をつけちゃ駄目なんだろう。
息子は静かに眠っていた。
頬に触れてみる。当然のことながらに冷たい。
棺桶に入った息子を見て……どうしても火葬のイメージがわいてくる。
僕は気がつくと、周囲の忙しいスタッフなど気にすることなく号泣していた。
悲しい。悲しい、悲しい……
泣いているうちに、打ち合わせの時間……スタッフにとっては、ただの1件の『仕事』でしかないことは分かっている。
嫁がやってきて、そして……告別式に来てくださるお坊さんがやってきた。
聞けば立派なお寺の住職様だ。一目見れば、人間的にも素養のある素晴らしい人だと分かった。
もうする告別式が始まる……
つらいつらい……息子との最後の別れが徐々に近づいていた。
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